ペルシャ絨毯のデザイン、種類と名称

メダリオン・コーナー・デザイン(ヘクマトネジャド)

ペルシャ絨毯の最も典型的な意匠がこのメダリオン・コーナー・デザインです。絨毯の中央にメダル模様の大きなメダリオンがあり、各コーナーにメダリオンの4分の1のパターンが配されているのが基本形です。その模様の由来については、天空の太陽、水に映ったモスクのドーム、魔除け、仏座、宇宙をシンボライズしたものなど様々な解釈がなされています。

ピクチャー・デザイン(タスヴィーリー)

ピクチャー・デザイン(タスヴィーリー)

絵画調のデザインを持つ絨毯です。具象的な動物や人物を描かないイスラムにあって、唯一イランのみがこれらを描く伝統を持っています。狩猟図、饗宴図、動物闘争図、樹木図などが多く、狩猟図は権力や富を、動物闘争図は季節の交替を、樹木図は生命の木や楽園の情景を、それぞれ表していると言われています。また饗宴図には、詩や物語のワンシーンがモチーフとして多用されています。

ゴルダニ・デザイン(ゴルダーニ)

「ゴルダーニ」はペルシャ語で「花と花瓶」を表し、花が差し込まれた花瓶をモチーフとしています。これは、生命に欠かせない水を象徴するもので、楽園の思想につながるものです。上部にメヘラブ(モスクの先端が尖ったドーム形状を平面にした形)、下部に花瓶を配したパターンが一般的ですが、絨毯全体を埋め尽くすオールオーバータイプやコーナーに配されるものも見られます。また、中には華やかな挿花や生命の木が伸びているものなどもあります。生命をつかさどる水と美しい花の織りなすゴルダニ・デザインは、まさに吉祥文様と呼べる「希望をたたえた美しさ」です。

ドーム・デザイン(ゴンバディー)

ドーム・デザイン(ゴンバディー)

ドーム(ペルシャ語でゴンバド)とは、丸屋根を指します。美しいモザイク・タイルで装飾されたモスクの円天井を下から見上げたデザインであることから、「ドーム・デザイン」と呼ばれています。メダリオンから放射状に網目のような文様が広がっていく様子が遠近法を用いて表現した独特のデザインです。また、モスクがテーマになっていることからモスク・デザインと呼ばれることもあります。このような意匠は、イスファハンやナイン、クムを産地とする絨毯に多く見られます。

パネル・デザイン(ヘシュティ)

パネル・デザイン(ヘシュティ)

庭園を様式化して生まれたと言われるデザインで、ペルシャ語ではヘシュティ(日干しレンガ)と呼ばれています。縦横に走る格子は庭園を区切る水路を表し、格子の中には様式化された様々な植物文様がはめ込まれています。イランの厳しい自然環境と単調な景観の中で、人々の水と緑の庭園に対する憧れが描かれたデザインです。パネル・デザインの絨毯で特に有名な「ホスローの春」は6世紀に作られ、庭園文様の原型になった作品と言われます。